2012年7月7日土曜日

エスペラント文筆家メーリングリスト(RJEV)設立

エスペラントでの著作、日エスやエス日の翻訳などに取り組む人の情報交換の場とするために新しくメーリングリストを作りました。以下に参加呼びかけ文を紹介します。(転載歓迎)


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エスペラント文筆家メーリングリストへのお誘い


 1887年にエスペラントを発表したザメンホフは、その普及活動に
邁進する一方で、聖書やアンデルセン童話を始めとする文学作品の
翻訳に力を注ぎました。彼の残した翻訳作品はエスペラントの言語
的基盤を確かなものにするとともに、エスペラントに生きた言語と
しての力を与えました。
 彼の志を継いで、世界各国のエスペランチストたちはエスペラン
トへの翻訳作品やエスペラントでの原作作品を作りだし、エスペラ
ントの言語としての成長を促しました。文学に限らず、政治、経済、
科学などさまざまな分野でエスペラントの言語的能力を発展させて
きました。
 私たち日本のエスペランチストがエスペラントの翻訳や原作を世
界に向けて発信することは、このようなエスペラントの発展に寄与
するだけでなく、エスペラントを真の意味での国際語にするために
も大いに貢献するものと考えます。
 このような考えのもとに私たちは新しいメーリングリストを下記
の要領で設立することにしました。これを通じて私たちの言語技術
を磨き、より質の高い作品を発表していくことで、エスペラントの
発展に貢献できるものと考えます。


◎新メーリングリスト要領
1.名称:
  エスペラント文筆家メーリングリスト
  Retlisto por Japanaj Esperanto-Verkistoj
  略称:RJEV
2.趣旨:
 主として日エス翻訳、エス日翻訳あるいはエスペラントでの著作
や記事投稿に精力的に取り組んでいるエスペランチストの情報交換、
相談、相互研鑽の場とする。具体的には翻訳や著作に取り組む際に
生ずるさまざまな問題、とりわけ日本固有の文化や社会制度に起因
する言語表現上の諸問題について個別に掘り下げて相談しあいなが
ら、相互に実力を磨いていく場を提供する。
 短期的な課題として、第100回日本エスペラント大会記念「日本
文学作品集(仮称)」への翻訳作品応募者どうしの交流・相談の場
としても活用する。
3.参加呼びかけ対象者:
 日エス翻訳者のほかに、エス日翻訳者、エスペラントで創作や雑
誌記事を執筆している人、校正熟練者など。また、翻訳・執筆に直
接携わっていなくても、翻訳・執筆の相談にのってくださる方。
「日本文学作品集(仮称)」へ翻訳作品を応募しようとしている人。
4.活動形態:
 メーリングリストでのメール交換。
5.参加方法:
 参加したい方は、お名前(実名)と配信用のメールアドレスをメ
ーリングリスト管理者(RJEV-owner(ĉe)yahoogroups.jp)までお知ら
せください。


多くの方のご参加をお待ちしています。


     2012年7月7日
     エスペラント文筆家メーリングリスト設立呼びかけ人
          柴山純一、島谷剛、広高正昭(五十音順)



※メールアドレス中の (ĉe) は @ と読み替えてください。

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2012年2月27日月曜日

EPUB : 埋め込みフォントの使い方

Adobe系のEPUBリーダーでは、埋め込みフォントを使って指定してやらないとエスペラントの字上符付き文字が正常に表示されないことは前に書いた。

で、その指定の方法だが次の手順でやる。(Sigilを使う場合)
1.使用するフォントファイルをFontsフォルダー配下に置く。仮にSerif系4書体とMonospace1書体とする。LiberaEoは架空のフォント名である。

LiberaEo_Serif.ttf
LiberaEo_Serif_Italic.ttf
LiberaEo_Serif_Bold.ttf
LiberaEo_Serif_BoldItalic.ttf 
LiberaEo_Mono.ttf 

2.Stylesフォルダー配下にスタイルシートを新規作成して、次のように記述する。
 @font-face {
  font-family: "LiberaEo Serif", serif;
  font-weight: normal;
  font-style: normal;
  src: url(../Fonts/LiberaEo_Serif.ttf);
}

@font-face {
  font-family: "LiberaEo Serif", serif;
  font-weight: normal;
  font-style: italic;
  src: url(../Fonts/LiberaEo_Serif_Italic.ttf);
}

@font-face {
  font-family: "LiberaEo Serif", serif;
  font-weight: bold;
  font-style: normal;
  src: url(../Fonts/LiberaEo_Serif_Bold.ttf);
}

@font-face {
  font-family: "LiberaEo Serif", serif;
  font-weight: bold;
  font-style: italic;
  src: url(../Fonts/LiberaEo_Serif_BoldItalic.ttf);
}

@font-face {
  font-family: "LiberaEo Mono", monospace;
  font-weight: normal;
  font-style: normal;
  src: url(../Fonts/LiberaEo_Mono.ttf);
}

body {font-family:"LiberaEo Serif",serif;}

@font-face内で使用するフォントファミリー名は任意の名称でよい。ここに書いたフォントファミリー名を以下のスタイルシートや .xhtmlファイル内でフォント指定する際に使うことになる。

3. Textフォルダー配下の.xhtmlファイルを開き、head要素の配下に先のスタイルシートへのリンクを記述する。

<link href="../Styles/Style0001.css" rel="stylesheet" type="text/css" />

以上の手続きにより、本文のデフォルトフォントは "LiberaEo Serif"になった。<em>タグや<strong>タグを使うことでイタリック体やボールド体を指定することができる。またモノスペースのフォントを使いたいときは"LiberaEo Mono"という名称で指定すればよい。

2012年2月23日木曜日

EPUB電子本でのエスペラント表示

EPUB形式の電子書籍でエスペラントの字上符付き文字の表示はどうなっているか。

結論から言うと、リーダーに依存する。
iBooks (iOS)、Callibre、EPUBReader (Firefox) では特別なことをしなくても、UTF8でテキストを作成しておけばそのまま字上符付き文字が正しく表示される。日本語表示も問題ない。
Adobe Digital Editions、SonyReader では何もしなければ、字上符付き文字は ? で表示される(e?o?an?o ?iu?a?de といった具合)。また、日本語表示も"????????????????"となって全滅状態。
原因はEPUB文書を解釈して表示するレンダリングエンジンの違い。前者は Webkit、後者は Adobe製のレンダリングエンジンを使っているとのことである。

まず日本語表示に関しては、「xml:lang="ja"」を日本語表示が必要な .xhtml ファイルの <html> タグに埋め込んでやればよい。
<html xmlns="http://www.w3.org/1999/xhtml" xml:lang="ja">
こうしておけば、日本語が正しく表示されるようになる。ただしリーダー自体に(パソコン上のリーダーはパソコンに)日本語フォントがインストールされていることが条件となる。

これにならってエスペラントの表示には「xml:lang="eo"」を埋め込んでやればよいのでは、と考えたのだが。
<html xmlns="http://www.w3.org/1999/xhtml" xml:lang="eo">
としても Adobe系のリーダーでは無効のようである。

最終的には、字上符付き文字を含むフォントをEPUBファイルの中に埋め込んでやらなければならない。ここで注意しなければならないのはフォントの著作権である。作成した電子書籍を大勢の人に配布するには、そのような使い方を許諾しているフォントを持ってくる必要がある。いわゆるフリーフォントである。細かく言うとフリーフォントと呼ばれるものの中にも許諾条件が微妙に異なるものがあって要注意である。

ネット検索してみると、いくつか候補が見つかった。
・Liberation fonts (Liberation Sans, Libereation Sans Narrow, Liberation Serif, Liberation Mono)
https://fedorahosted.org/liberation-fonts/
フォント埋め込み例外付きのGPLライセンスで提供されている。このフォントを埋め込んだだけで著作物が自動的にGPLライセンスになることはない。FELのEPUB電子書籍やEPUB版Monatoが使っている。

・ParaType - Public Type Project (PT Sans, PT Serif, PT Mono)
http://www.paratype.com/public/
ParaType Free Font Licensing Agreement の趣旨によれば、EPUBに埋め込んで使う分には何の問題もない。キリル文字を含んでいるのでファイルサイズがやや大きい。ロシアのSezonojの電子書籍がこれを使っている。


・SudEuro Fonts (Ariel SudEuro, Ariena SudEuro, ArielSudEuro Black, Bookman SudEuro, Courier SudEuro, Garamond SudEuro, Times SudEuro, Verena SudEuro)
http://www.unity.talktalk.net/BE/esperanto/espfonts.htm
パブリック・ドメインなのでライセンスの問題は無い。ファイルサイズがとても小さい。エスペラントを含むラテン系の特殊文字を利用できるが、一部の句読記号が入っていないので注意が必要。

結局さくら文庫のEPUB版に埋め込むには、ファイルサイズと収録文字種の兼ね合いで Liberation fonts がよいという結論に至った。他にもいくつか使えそうなフォントはあるが、もう少し調べてみないとはっきりしたことは言えない。

2012年2月11日土曜日

Mirinda Ĉapelo: EPUB電子本を作ってみる

さくら文庫で最近公開した "Mirinda Ĉapelo" をEPUB形式の電子書籍にしてみた。

■必要な道具類
  • EPUBエディター "Sigil" (フリーソフト) http://code.google.com/p/sigil/
  • EPUBリーダー1 iBooks(iPad用のアプリ)
  • EPUBリーダー2 SonyReader(PRS-T1)
  • EPUBリーダー3 EPUBREADER(Firefox用のアドオン)

フリーのEPUBエディターはこれ(Sigil)だけしかないみたい。WYSWYGでやれることは多くないが、XHTMLとCSSのソースコードが書ければひと通りのことは何でもできる。そんな感じのソフト。
EPUBリーダーは一つあればいいのかも知れないが、今回試してみてそれぞれに独自の癖があることがわかったので、複数の機器で見え方を確認するのがよい。

■素材

 ■予備知識・参考情報

 ■手順
  1. "Mirinda Ĉapelo"をブラウザに表示させる。
  2. Sigilを起動。新規作成の状態で、1ページ目(Section0001.xhtml)が白紙で中央パネルに表示。
  3. この白紙にブラウザから1ページ目にしたい分をコピー&ペースト。 
  4. 左側パネル(Book Browser)のTextフォルダを右クリックし、"Add New Item"を選択。
  5. Textフォルダ下に2ページ目(Section0001.xhtml)が作成されるので、アイコンをダブルクリックして中央パネルに表示(当然白紙状態)。
  6. この白紙にブラウザから2ページ目にしたい分をコピー&ペースト。
  7. 以下必要なページ数分だけ上記作業を繰り返す。
  8. いくつかの文字飾りがWYSWYGで可能(Book View Mode:デフォルト)。太字、斜体、下線、消し線、左寄せ、右寄せ、中寄せ、両端揃え、見出しの大きさ。これ以外のことは Code View Mode にして XHTMLソースにタグ付けをしなければならない。タグ付けの効果は Book View Mode に切り替えて確認できる。
  9. 最後までできたら、名前をつけて保存する。"xxxxxx.epub" というファイルが作成される。

■確認作業
  • 完成したEPUBファイルをそれぞれのEPUBリーダーで表示させてみる。
  • 上記手順で作成したファイルは iBooks と Firefox ではうまく表示されるが、SonyReaderでは字上符付き文字が?に文字化けしてしまう。 対処法は別の記事で。

■その後の作業
  • 画像付きの表紙を作成する。
  • 目次を作る。
  • SonyReaderその他のリーダーで字上符付き文字を確実に表示させるために、EPUBファイルにフォントを埋め込む。
  • SonyReaderで日本語を表示させる方法。
これらについては別の記事で。

実際にEPUB書籍を作ってみて分かったことは、レイアウトに関して作成側がいろいろ指定したことでも、リーダー側で変更されてしまうということ。例えば見出しの中寄せ指定は iBooks では無視されて左寄せで表示される。iBooks はEPUBの埋め込みフォントを無視して、自前のフォントの中から読者に選択させる。言い換えると、大ざっぱに作ったEPUBでも iBooks は一定水準以上に見た目よく表示してくれる。逆に SonyReader はデフォルトでの表示機能が乏しい。EPUB作成側がいろいろ細かく指定してやらないと見た目が良くならない。EPUB作成者としてはこれらのことを念頭に置いて作成する必要がある。

2012年2月8日水曜日

Librejo de Cindy: シンディーの本屋さん

シンディー・マッキーさんがエスペラントの電子書籍を集めて公開している。
場所はここ:
http://cindymckee.com/?page_id=11

大概はPDF形式だが、中にいくつかEPUB形式のものもある。
初めの方に推薦書が並べてあるので、どれを読んだらいいか分からない人はこの中から選んでみるのも良い。
Fajron sentas mi interne de Ulrich Matthias 
Homoj sur la tero de Stellan Engholm 
Metropoliteno de Vladimir Varankin 
Pro Iŝtar de Heinrich Luyken 
Sekretaj sonetoj de Peter Peneter 
La stranga butiko de Raymond Schwartz 
 エスペラント文学の案内書には必ず出てくる有名なものばかりだ。印刷本では入手が難しいこともあって、私は恥ずかしながらどれも読んだことがない。"Sekretaj sonetoj" の一部をコピーでチラ読みした程度。
 もうすこしゆとりができたら、どれも読んでみたい本ばかりだ。

2012年1月16日月曜日

La Ŝtona Urbo: 女性の眼から見た歴史小説

Historia romano と銘打っているがいわゆる英雄や偉人は登場しない。主人公は、紀元1世紀の初めのイギリス南部に生まれたケルト人の少女。ローマ軍の侵攻により捕虜となり、ローマに強制連行され、奴隷として売られる。歴史的事件が直接語られることはないが、物語の背景として主人公の眼を通してしっかりと描かれている。

この物語を読み始めたきっかけはKindle(電子書籍リーダー)を買ったことだ。FEL(Flandra Esperanto-Ligo)のサイトに電子書籍の販売コーナーがあり、mobi形式とePub形式で試し読みができるようになっている。作者のAnna Löwensteinの評判は前から聞いていて、読みやすくてしかも生き生きとした描写が得意とのことだったので、"La Ŝtona Urbo"を選んでみた。

第1章は、ケルト人の数家族が集まって暮らす住居に、村から村へ渡りながら物語を話して聞かせる語り部がやって来るところから始まる。読者である自分は古代ケルトの暮しがどういうものか全く知らないので、最初のうちはとまどったが、物語の展開に従い情景描写を追っていくうちに彼らの暮らしぶりや考え方を理解することができ、自然と物語の世界になじんでいった。また要所要所に新たな展開が待ち受けており、読者として飽きることがない。これは何よりも作者のていねいな描写力とすぐれた構想のたまものだと思う。

主人公の少女は婚約者の家族との交流を通じて次第に新しい生活を夢見るようになる。第2章に入るとローマの不穏な動きがケルトの村々に伝えられるが、そのような中でも人々の日々の暮しは続いていく。穀物が豊かな実りを見せ始めた秋、ローマの大軍が突如海を渡って攻め寄せてきた。戦闘は遠く離れた地域で始まったが、ローマ軍は各地でケルトの部族軍を打ち破り、徐々に少女の暮らす村に近づいてくる。村人たちは防塁を築き、寄り集まって攻撃に備える。

読んでいて飽きることがない。この先何が起きるのかが気になって次々とページを繰っていく(電子書籍リーダーで読んでいるので、正確にはボタンを押すのだが...)。エスペラントの本をこれほどはまって読んだのは、Julio Baghyの"Viktimoj / Sur Sanga Tero"以来だと思う。

サンプル版なので読むことができるのは全8章のうちの第3章まで。ローマ軍に敗れて捕虜になった主人公の少女が船に乗せられ、生まれて初めて海を渡り、ローマをその眼で見る。表題の"La Ŝtona Urbo"とは彼女から見たローマのこと。彼女は奴隷として売られ、ローマ郊外にある貴族の別荘での生活が始まる。言葉も全く通じない異国の地でどんな運命が彼女を待っているのか。

ここまで読んでやめるわけにはいかないので、FELのオンラインショップで正規版を購入した。詳細は省くが、第4章以降も期待を裏切らない波瀾万丈の面白さだった。

全巻を読み終えた後で、少し歴史を調べてみた。
*紀元前55年、54年、シーザーによるブリタニア遠征
*紀元40年、カリギュラ帝によるブリタニア遠征(直前に中止)
*紀元43年、クラディウス帝によるブリタニア遠征 ←主人公捕虜となる
*紀元64年、ローマの大火、皇帝ネロによるキリスト教徒迫害 ←最終章

これらの史実が物語の展開の上で重要な役割を果たしているのだが、私自身はほとんど知らないことだった。歴史を知らなくてもこの小説は十分に楽しめる。それは間違いない。ぜひお薦めしたい一冊。

私的総合評価:★★★★★ (星五つ)

2012年1月5日木曜日

Marvirinstrato: 不思議な町の不思議な物語

"Marvirinstrato" (Originalaj Noveloj en Esperanto), verkita de Tim Westover (2009).
昨年の12月4日に作者のウェブサイトからダウンロードして読書開始。本日読了。

気のきいた文体で読書を楽しむことができた。本書の題 "Marvirinstrato(『人魚町』)"が暗示するように、収録された18編の短編はいずれも童話風の物語。舞台となるのは私たちの住んでいる町とよく似ているがどこかずれた不思議な町である。

一番気に入った作品は"Orfiŝeto kaj la Glacia Monto"。川を旅する金魚が猛暑の荒れ地で一人の男に出会う。王様の命令で極北の海に氷を採りにいくというその男に連れてもらい、金魚の冒険が始まる。苦労の末ようやく王様のもとに帰還するが、苦労して運んできた氷塊は道中の暑さのため今や小さなかけらになっていた。さて、その氷のかけらをどうするのか? 意外な結末が心にしみて、とてもよかった。

"Tri ruĝaj knabinoj"は、定冠詞 la をエスペラントに採用することを決定づけたザメンホフの逸話から表題をとったものと思われる。隣家に越してきた謎めいた三人の少女たちに惹かれる三人の少年たち。主人公の少年は少女たちの気を引こうとして次第に危険を冒すようになっていく。前半の展開の期待感に比べて、後半の展開と結末が物足りないのが少し残念なところ。

"El la Taglibro pri la Okcidenta Vojaĝo"は秘境の地を旅する探検家の物語。現地語で「氷の川」と名づけられた川に遭遇する。氷などあるはずもない温暖な土地でどうしてそんな名前がついたのか? ガイドの説明では "lunulino"(junulinoではない)が水浴びをするからだという。ガイドの案内で川に沿ってさかのぼった探検家は不思議な光景を目にする。

"Antaŭparolo al la Plena Verkaro de Yvette Swithmoor"は架空のエスペランチストの著作集への前書き。エスペランチストやエスペラント運動への皮肉も織り交ぜて、胡椒の利いた小品。エスペラント界を知る人にはにやりとさせられる個所があちこちにちりばめてあり、楽しむことができる。

随所に気のきいた表現が見られ、よどみない文章は作者のエスペラント使いの力量を感じさせる。ただ作品としての詰めが甘く感じられる部分がいくつかあり、残念なところ。"Parodibirdo"や"Labirintoj"は展開がやや冗長な印象を受けた。

いずれにせよ、エスペラント原作作品としては水準を上回っており、読んでみて損はないと思う。

私的総合評価:★★★★☆(星4つ)